闘牛ファンの夢

越後闘牛の角突き牛は主に岩手県の南部地方から導入されます。小千谷市および山古志村 の牛舎で育てられてトレーニングを積み、早ければ3歳でデビューします。その後、試合 を重ねるうちに本質的に闘牛に適性のない牛や力量の劣る牛は厳しい闘牛の世界で淘汰さ れていきます。
牛は気性にもよりますが、一度負けると大抵闘いに対する恐怖心がついてしまい、試合に 出ても恐くて相手と角を合わせることができなくなり逃げるようになったりします。そう なった場合は角突き牛としては残念ながら引退するしかありません。率直に言うと肉にな ることになります。そうした厳しい闘牛の世界で生き残り、横綱牛にまで成長するのは至 難の業です。
例えば、3歳の角突き牛を100万円で購入したのはいいが初戦で負けて引退、というこ ともざらにあります。
私の父は10年近く前に、とある3歳牛を購入しました。父はその牛を『健康力』と名付 け、父の実家にあたる山古志村虫亀の平澤家の牛舎で世話をしてもらうことにしました。 その後、幸運にも『健康力』は順調に成長し数々の激戦を制しながら、現在横綱の地位に まで出世することができました。私の父が角突き牛を購入したのは始めての事であり、牛 を見る目があったと言いますか、なにより本当に幸運な事でした。
越後闘牛では牛が強くても賞金がでたりするわけではありませんが、強い横綱牛を持つこ とは一族の名誉であり、まさに男のロマンと言えます。男なら角突き牛を持ちたい、願わ くば横綱牛に育てたい、「俺の牛が一番強い」・・・・。これは越後闘牛に限らず、沖 縄や徳之島など、どこでも共通する闘牛ファンの夢であると言えるでしょう。

著:ヤス (2001.8)

東大通り 『健康力』